地方創生の中心としての製造業

2021.09.25

広がる地方創生事業

首都圏への人口集中などで地域格差が深刻化する中、行政が地方創生施策に力を入れています。地方創生では、各地のすばらしい文化や技術・材料を活用して新しい魅力あるモノを作っていくことが必要です。その中で注目されているのがモノを作る能力をもつ製造業です。

首都圏に企業が本社機能を移転していく中でも、製造拠点については簡単に移転することはできません。そのため、地方にも製造能力が残ることとなり、その力が地域創生のパワーとして注目されています。

開放特許 + 地方創生

東海地域は、トヨタ自動車を中心とする自動車産業の中心で全国的にみても恵まれた事業環境にあると言えますが、自動車のEV化(従来部品が置き換えられたり、部品点数も減ると言われています)や製造拠点の海外移転など将来の環境変化を不暗視する企業もあります。そのような背景から、中小企業の中にも下請け製造だけではない新しい何かを始めたいと考える企業があるようです。そのような取り組みは、地方創生という観点にもピッタリです。

しかしながら、中小企業では独自・主体的に新しいアイデアを作り出すこと・商品企画をすることをあまり経験していない場合も少なくありません。確かな製造技術を持っているとはいえ、商品にするアイデアを生み出すことは一朝一夕ではできません。

この課題を乗り越えるべく、発明plusでもたびたび紹介している開放特許というビジネスモデルが地域創生事業で活用されようとしています。開放特許とは、大企業などの特許保有者が他社に特許技術を開放したいとして表明している特許のことで、ライセンス契約した開放特許の技術と自社技術を組み合わせて新商品を作り出すなどのビジネスモデルが確立されつつあります。

東海地域でも、愛知県豊田市のものづくり産業振興課が本年度から開放特許事業を始めました。愛知県産業労働部も、中部経済産業局知的財産室と連携して開放特許事業に長年取り組んできています。さらに、瀬戸信用金庫や豊川信用金庫など民間ベースでもセミナーを開催するなど、開放特許活用の動きが広がっています。

地方創生のエッセンス

開放特許を使って製造業者が新製品を作るだけでは、地方創生とは言えません。それぞれの地域の文化・技術・材料などの特色あるものを使うことも必要です。開放特許にも地域の材料を活用できそうなものがあるので紹介しましょう。

イトーキの「米の籾殻を圧縮した板材料技術」や富士通の「植物原料の圧縮成型技術」などがあります。特許としては材料の産地の限定はありませんが、その特許技術に地元の材料を組み合わせることで地域の技術に昇華できます。愛知県豊田市は自動車産業だけでなく、農林業も盛んです。米の籾殻や林の間伐材など廃材も多く出ますので、前出の開放特許も活用できそうです。

地元密着系の技術活用で異業種の力も借りて新しいビジネスを生み出すことが、真の地方創生に繋がると考えます。実際に愛知県豊田市では、開放特許と地域材料を組み合わせた商品開発が進められています。特許技術+地域資源をキーワードに、製造業を中心とした地方創生が盛んになるのではないでしょうか。

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