知的財産は土地と似ている

2022.01.31

無体財産

形ある有体財産であれば、持ち主が自由に使う権利を持つことは理解が容易です。有体財産のうち、価値が高い一方で誰が所有しているのかが一目でわかりにくい土地などについては、法務局に登記されることで所有者(権利者)が明確になっています。

知的財産権の対象であるアイデアは形がないので無体財産と呼ばれます。無体財産そのものは所有や独占といった概念でとらえることが難しく、そのものでは誰のものと言いにくいという特徴があります。

そこで、例えば発明であれば特許出願によってアイデアの範囲を明確にして特許庁に登録することで、特許権としてアイデアや所有者を明確化しているのです。そう考えると、出願・登録によって明確になる知的財産権は登記によって明確にされている土地と似ているように思われます。

土地であれば、家を建てるなど(法律等の範囲内で)自由に使ったり、他人に貸し出したり、または勝手に使っている人を追い出したりすることができます。同様に、知的財産権も自分の権利の範囲ではアイデアを自由に使えますし、他人に貸し出す(許諾する)ことも、勝手に相手にアイデアを使う他人の行為を差し止めることもできるのです。

土地との違い

一方で、知的財産権が土地とは違うところはどこでしょう。

大きな違いの1つは、著作権などの例外を除けば自分の意志で権利を成立させようと思わない限り、その権利が発生しないことでしょう。特に特許では新規性といって、出願の時点で世の中にない新しいものでなければならないという条件が課されるため、商品などを販売した後から権利を取得することはほとんど不可能です。特許出願をせずに商品を販売をすることは、本人が特許を取れないだけではなく他の人も特許を取れないということになるため、いわば特許を取らずにアイデアを公開し誰もが自由に使えるようにするようなものです。

また、土地はよほどの事情がない限り半永久的に存在しますが、知的財産権は一定の期間をもって消滅します。例えば特許権であれば出願から原則20年です。最も長い著作権でも著作者の死後50年、映画なら原則公表から70年です。

権利が消滅した後には、その知的財産は誰でも自由に使えるようになります。ジェネリック医薬品や青空文庫は、このようにして権利が消滅した知的財産を活用した例です。

有効活用

誰かの土地を借りて商売をしているときには商品に土地代分を乗せなければなりませんが、公共の場所では場所代がほとんどかからないため、商品の価格を下げられます。一方で、土地を持っていれば他人に貸すことで利益を得ることも可能です。

知的財産を土地のように考えると、知的財産の権利化や活用にも積極的に取り組んでいくことが必要であるとわかります。

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